玉井醤の径山寺味噌、紀州・湯浅の。
白浜までの道すがら、湯浅町で金山寺味噌を買いました。目指すは、あの…「“径山寺味噌”と書いてあって糖類添加していない…」。屋号も思い出せないまま、記憶をたよりに湯浅の町をグルッとまわって「ここちゃうか」と入って行った細い道に、ありました。
看板見て「これやこれや、この“玉井醤”っていうやつ」。“元祖古伝造径山寺味噌”の文字も見られます。ただ…「ほんまにやってるんか?」というくらいひっそりしています。「夏野菜が採れる時期しか造らん」とか以前…15年くらい前に訪ねた時、当主と思われる方が言ってはりましたので「まだ時期ちゃうし…ムリやろ」と思てましたらうちのひと「訊いてみよか」と店の中へ。クルマの中で待つこと10分。「やってはったわ」と、1キロわけてもらってきました。
見ての通りかなり熟成が進んだ色合い。以前は晩夏か初秋の頃に頂いたので、かなり見た目が違います。これは、たぶんほぼ一年経ったモノなのでしょう。
さてお味は…「これや、この自然な甘さ、旨さや」といった感じ。前回のそれはそれでフレッシュな味わいが良かったのですが、今回のは深さが全面に出ている感じです。
以前買い求めたときは「うちのは砂糖加えて造ったもん違いますから、他所様の金山寺味噌のお味に馴れてはったら、口に合わんと思います」みたいなことを当主の方に言われ、味見をして納得してから買ったのですが、今回は、そういう説明もなかったそうです。80歳代のおばぁさんがひとりでやってはったとうちのひとが言ってましたが…これからどうなるのかかなり心配です。というのも、帰宅後、調べてみますと日本の醤油のルーツがここの醸造元やと言われているみたいやからです。醤油業界のサイトにこの様なことが記されていました。
1580年ごろ(天正年間)には、日本で最初のしょうゆ屋さんと思われる玉井醤が、みそ・しょうゆ業を始めたといわれ…(以後省略)
紀州湯浅散歩というサイトの玉井醤本舗(北村家)にも“その味は400年前の江戸時代初期から受け継がれているそうです”と記されています。
冷蔵技術もなく、保存料も発達していなかった頃の保存食ですから、今の人間には正直ちょっと“塩辛い”のですが、こんな天然の旨味を持った、醤油、味噌の原型の様な玉井醤の径山寺味噌がいまも造り続けられているのは…ちょっと奇跡的かも。何とかこれからも同じ製法で造り続けられてほしいなぁと心より思うのでした。塩辛いけど、ほんまにおいしいもんなぁ。
■ 元祖古伝造径山寺味噌 『玉井醤』 大阪屋三右衛門
和歌山県有田郡湯浅町大字湯浅531
(於:和歌山県湯浅町) 酸酵方法でさらに濃醇させる必要なし!当たり前か。
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コメント
中国径山寺から持ち帰った味噌の製法が、此の湯浅を経て黒潮に乗り千葉の銚子・野田に伝わり濃口醤油となったらしい(吃驚)。
で、湯浅の金山寺味噌の製造過程で出る溜が日本の醤油の元祖、のち龍野で淡口醤油が考案されたんですね。
味噌・醤油とも時間をかけた無添加“ホンマモン”がイイですね。
最近肥満気味なので、豆腐・納豆・豆乳を摂るように心掛けています(笑)。
いつも龍造さんのブログで何かと勉強させて貰ってます(感謝)。
“大豆たんぱく”から『醤』へと見事な流れです…手前味噌(大汗)
投稿: 難波のやっちゃん | 2012年5月26日 (土) 20時53分
難波のやっちゃんさま
最近とみに冴えてますねぇ切り返しが。もう全然ついていけませんので座布団300枚…って感じです。
>>味噌・醤油とも時間をかけた無添加“ホンマモン”がイイですね。
ほんとほんとです。お酒の世界では、やっぱり香芝市の大倉本家さんが仕込む『金鼓・濁酒』、これですよね。http://www.kinko-ookura.com/dakushu.html
それから、勉強させて貰ってますのは、こっちの方です…って、褒め合いも見苦しいですか。ま、ほんと、いつもいつもおおきにです。
投稿: 山本龍造 | 2012年5月26日 (土) 23時26分
自分も跡継ぎしなかったんですけど、どこでも後継者の問題は深刻でしょう。
ここのお店なんかはこうやって買いに来てくれますけど、大量生産の品物がはるかに安く売られてますから。
美味しい物は残ってほしいですが。
投稿: ぽんぽこやま | 2012年5月27日 (日) 23時01分
ぽんぽこやまさま
そうですね、これだけ流通をはじめ世の中のシステムがすっかり変わると、よっぽど個性を際立たせた商品を造らん限り、跡を継いでも商売として成立しないでしょうね。
歴史あるお店や会社がやむなく廃業される…残念ではありますが、仕方ないことやなぁと思っています。便利な世の中になればなるほど、何とも生活が均質化されてつまらん様になる…ええんですけど、しんどいもんですね。
コメントおおきにでした。
投稿: 山本龍造 | 2012年5月28日 (月) 21時18分
今日、玉井醤まで行ってきました。障子の戸をこじ開けて大声でこんちわーと叫ぶと、お婆さんが出てこられました。ちょっと弱っておられたものの、味噌をすくう手つきは鮮やかでした。買い求めるのにえらい時間がかかりましたが、今日は暑いですなぁとかしばらく話をして、これから暑い寒いの繰り返しで体に気を付けて達者でおっとくなはれと言って辞してきました。
径山寺味噌は龍造さんの仰るとおり、塩辛いが深い滋味がありますね。熟成が進んだものも食してみたいものです。
ところで、保存はどうやってされていますか?お店にあったように、室内で、布(もしくは紙)をかけて置いておくほうがいいのか、冷蔵庫に入れたほうがいいのか…。
投稿: たのけのあむら | 2013年10月 6日 (日) 19時54分
たのけのあむらさま
こんにちは。まずはレスが遅くなりましたこと、お詫び致します…って、いつものことですが。
行ってきはったんですね。玉井醤。お婆さんがお元気にしてはると知って安心しました。
とは言え、ホンマにこれからどうなるのか心配なところです。最古の醤油醸造元…個人レベルでの継承が難しそうなら、ヒガシマルやキッコーマンなんかの同業者大手が何とかその技を伝承してもええのではないかという気もします。
それで、どう保存していたかですが、あんまり難しいこと考えないで、冷蔵庫に入れておいただけやったと思います。きっと鍛えられた食品故、どんな状態でも大丈夫やないかという気もするんですが。
玉井醤の最新情報、ご報告頂きまして有り難うございました。
投稿: 山本龍造 | 2013年10月16日 (水) 11時15分