6月1日に思う。 2011
まず最初に“一流と二流三流を同列に語っているアホさ加減”をお許し頂きまして、以下お読み頂ければさいわいです。
一ヶ月ほど前でしたか、NHKのDeep Peopleという番組に篠山紀信・ホンマタカシ・梅佳代の三人が人物写真について語ってはりました(※番組のテーマ自体は『女性の美を撮る写真家』という内容)。たまたま見はじめたその番組でしたが、その中でホンマ氏の写真の、そして被写体となる人との距離感の考え方を知るや、「…そうなんや」。
要約すると氏の姿勢は「被写体となる人との(心理的)距離感が近くならないうちに撮り終える」というもの。純粋にそこにいるその人そのままを撮りたいというその考え方にまず「ほぅ」と。次に「撮られる方にしたら現場は嫌なものだろうからさっさと引き上げたい」と、3カットほどしかシャッターを押さないという事実に「…」。今まで自分が良しとしていた方向性と真逆のやり方に「何でや?」と一瞬思いましたが「ははぁ、そうなんか」と。「自分にとっての常識を疑え」を座右の銘にしていたことすら忘れていた自分に気づかされました。
相手と心理的距離感を縮めた上でリラックスした表情を引き出す…自分の今までのスタンスも間違いではないとしても、この考え方というのは、一見相手に親切でありそうで、じつは…じつに傲慢かつ自信なさそげな態度なのかもということを思い知らされた気がして。そして“現場をはやく終わらせる為に数カットしか撮らない”というのも、どっかで「それなりにフイルム回した上でええよりカットを選ぶことが相手にも親切」と思っていた我がの常識も…よくよく考えたらプロ意識に欠けることで、リスク承知でサッと撮り終えることこそがプロの仕事やということかと…参ったなぁ。
話変わりますが、昨年、少し話題になった歌舞伎俳優、某氏の肖像写真を撮らせてもらいました。世間を賑わしたあの話題の少し前のこと、某誌の依頼を受け撮影に挑んだ現場は…とてもピリピリ。事務所側の人々も取材する我々も緊張する中、「これこれ然々でこういう表情で…」と趣旨を伝え、いざ撮影。10カットほどシャッターを押したその時「もう、ひと通りやったんだけどなぁ」と、ひと言。その言葉以上に伝わってくるものを感じ、そこで撮影を終えました。この時のニュアンス、ちょっと思い出したくないくらいに心が揺れました。
事務所に戻り画像処理していても「…なんだかなぁ」と悶々とした気分のまま。そんな中でも思ったのは「それでも…やっぱり表情はさすがやな」と。印刷物が送られてきてその上がりを見てやっぱりその力強い視線に…あれこれ考えさせられましたが、やはりあの現場での氏態度に心よくない気分になったのを氏のせいにしていました。ところが…「そう言うことなんか!」と、ホンマ氏の考えのひとつを聞いてようやく気づいたのでした。
あの心よくないとも取れる感じ、あれは、相手にも“一流”を求めるというサインやったんですね、きっと。「俺は全身全霊かけていま現場で表情を演じている、お前もプロやったら一瞬で勝負せぇ」と。
…甘かったなぁ。今までもそこそこ多くの著名人も含めて様々な人々のポートレート撮影させてもらってきたけど、喋ってのせてのせてリラックスしてもろて数撮って…それがプロの現場か?…って、まぁそれもアリやけど、緊張した中で瞬間逃さずサッと現場を去る…これが一流のひとつのあり方ってことですかな。
歌舞伎俳優某氏の撮影体験とホンマ氏の発言に、自分の底の浅さを思い知らされました。気がつけば…何かと思考の、仕事のルーチン化が進んでいたなぁ。「これでええ」と思わんと、もう一度写真のこと考えなおしてみよ。写真全般について再検証してみる必要性を感じさせる部分がホンマ氏の考え方にはある様に思えるしな。6月1日、今日は“写真の日”。
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コメント
こんばんは~♪
肖像写真は全くといって撮らない私ですが・・・・
なんや、こぅ 考えさせられますねぇ (ーー;)
いぁ~ 有り難うございました。
投稿: 啼兎 | 2011年6月 2日 (木) 01時22分
啼兎さん毎度でございます。
アホげにしては長文は記事をお読み頂いたんですね。
「年かさの割に幼いでなぁ」と思わせられること多くて…です。
こんなネタにまで…、コメントおおきにです。嬉しいです。
投稿: 山本龍造 | 2011年6月 2日 (木) 10時30分
まぁ~キシンの話はプロの自分はこう有りたいと思ってるんでしょうね、良ろしいんじゃ無いですか、ウメカヨさんて何処か飛んでますよね、何か噛み合わなくて、聞いてるこっちがハッキリせいと言いたくなって、写真のイメージと違ってるのがオカシカッタのです。
投稿: 仁 | 2011年6月 2日 (木) 18時03分
こんばんは イイ写真ですね
で 一流と二流、三流ってナンですのん。
僕は ホンマモンとパチモン、ポケモンに別けます(笑)。
今回の原発事故で判った様に、エコでクリーンで安全やって云ってた政・官・業・学界そしてマスコミの真贋が(怒)。
日〇、朝〇新聞から東京(中日)新聞や日刊ゲンダイに切換えた人も多いという。
僕 建前や綺麗事そして何より権威が大嫌いです。
本音、本質、現場主義ですわ。
謙虚な龍造さんは十二分にホンマモンですよ(敬)
投稿: 難波のやっちゃん | 2011年6月 2日 (木) 18時11分
● 仁さま
あの番組見られたんですね。確かに「おっしゃるとおり」な部分もありましたが、あれもまた“良し”な番組の作りに好感が持てる部分もありました。あんまりテレビ見んのですが、やっぱりテレビも見なあかんなぁと思いました。
●難波のやっちゃんさま
一流と二流三流の違い…うむぅ、「ナンですのん?」と問われれば。あれこれ思うこといろいろです。
つい最近まで“能ある鷹は爪隠す”の通り、一流とかホンマモンの人というのは、「謙虚で奢らんひと」やと思っていたんですけど、そういうもんとは違うところにやっぱりホンマモンというのはあって、ごっつ嫌な輩でも「コイツは…違うなぁ」と思わせられるモンを作り出せるひとというのがいるんやなぁと今は思っています。
若い時の“根拠なき自信”に満ちあふれてエラソーな態度を取ってるのはアホですが、そやなくて…うまいこと言えませんけど「たとえ飢え死にしそうになっても我がのヤリ方は変えん」という“覚悟”を持って生きているひとを「すごいなぁ」と思うんです。
歳と共に自分の凡人度を突きつけられて謙虚になる…私なんかそんな感じですね。それはそれでホンマに“皆様のお蔭です”と思えてええんですけども。
お二人ともコメントを有り難うございました。
短文でうまく纏められませんですいませんです。
投稿: 山本龍造 | 2011年6月 5日 (日) 22時44分